上皇后(美智子様)と「でんでんむしのかなしみ」

かたつむり 自然

 

 

でんでんむしのかなしみ」は作家新美南吉氏による児童文学作品です。
創作童話として1935年(昭和10年)に発表されて以降、広く親しまれてきました。

この作品に注目が集まったのは1998年。
上皇后がインドのニューデリーで行われた国際児童図書評議会の基調講演でこの「でんでんむしのかなしみ」についてお話しされました。

「でんでんむしのかなしみ」は、上皇后が幼少の頃に読まれた本に書かれていたお話ですが、その後も、ことあるごとに、幾度となく脳裏にあがってきたということで、こども心に深く刻まれていたのでしょう。

「殻一杯になる程の悲しみということと、ある日突然そのことに気付き、もう生きていけないと思ったでんでん虫の不安とが、私の記憶に刻みこまれていたのでしょう。」とお話しになっています。

民間から初めて嫁がれた上皇后
震災に打ちひしがれた人々、無残な光景、戦争中のエピソードと慰霊の旅、さらに心無いマスコミの報道。

微笑みの下で、生きていくということは、楽なことではないのだという、不安と向き合ってこられたのです。

かたつむり

一ぴきの でんでんむしが ありました。

 ある ひ、その でんでんむしは、たいへんな ことに きが つきました。

「わたしは いままで、うっかりして いたけれど、わたしの せなかの からの なかには、かなしみが いっぱい つまって いるではないか。」

 この かなしみは、どう したら よいでしょう。

 でんでんむしは、おともだちの でんでんむしの ところに やっていきました。

「わたしは もう、いきて いられません。」

と、その でんでんむしは、おともだちに いいました。

「なんですか。」

と、おともだちの でんでんむしは ききました。

「わたしは、なんと いう、ふしあわせな ものでしょう。わたしの せなかの からの なかには、かなしみが、いっぱい つまって いるのです。」

と、はじめの でんでんむしが、はなしました。

 すると、おともだちの でんでんむしは いいました。

「あなたばかりでは ありません。わたしの せなかにも、かなしみは いっぱいです。」

 それじゃ しかたないと おもって、はじめの でんでんむしは、べつの おともだちの ところへ いきました。

 すると、その おともだちも いいました。

「あなたばかりじゃ ありません。わたしの せなかにも、かなしみはいっぱいです。」

 そこで、はじめの でんでんむしは、また べつの、おともだちの ところへ いきました。

 こうして、おともだちを じゅんじゅんに たずねて いきましたが、どの ともだちも、おなじ ことを いうので ありました。

 とうとう、はじめの でんでんむしは、きが つきました。

「かなしみは、だれでも もって いるのだ。わたしばかりではないのだ。わたしは、わたしの かなしみを、こらえて いかなきゃ ならない。」

 そして、この でんでんむしは、もう、なげくのを やめたので あります。

 

 

 

 

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