ないしょシネマ「南部の反逆者」

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今回のないしょシネマは1957年製作のカラー映画「南部の反逆者(Band of Angels)」
人種差別で問題になるアメリカ南部を舞台にしたアドベンチャー・ロマンスの傑作です。

南部の反逆者(Band of Angels)

アメリカ南部は、アメリカとは異質と思われがちだが、実はこの国の本質なのだ。
異質に見えるのは、アメリカ人の悪いところばかりが凝縮されいているからだ。
(ハワード・ジン「神秘的南部」)
南部は大きく分けると3つで16州がありますが、南北戦争で奴隷州を唱えたのは、太字の州です。
  • The South Atlantic States: デラウェア州、フロリダ州、ジョージア州、メリーランド州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、バージニア州、ウェストバージニア州 (ワシントンD.C.を含む)
  • The East South Central States: アラバマ州、ケンタッキー州、ミシシッピ州、テネシー
  • The West South Central States: アーカンソー州、ルイジアナ州、オクラホマ州、テキサス

実は、文化的、音楽的に特長があり、お料理が美味しい地域でもあるんですね。
「ハードロックカフェ」はアメリカ南部料理を中心にしたレストランで、父親を見返したい一心で英国で開業しました。

では、「南部の反逆者(Band of Angels)」がどんな反逆をするのか

ロックンロール誕生の聖地、アメリカ南部

キング・オブ・ロックンロール、エルヴィス・プレスリーはアメリカ南部に生まれ、生涯を南部で暮らし、南部で死にました。ロックンロールが南部で生まれたのは「南部で育った白人の稀有な才能による化学反応」でした。顕著な事例はプレスリーが白人の歌を歌うと黒人のように聴こえ、黒人の歌を歌うと白人のように聴こえることでした。生涯そうでした。

ロックンロール誕生の地である「南部」というキーワードに惹かれて何気なしに録画した「南部の反逆者」が思いもしなかった良品で、自分には珍しく最後までダレずに鑑賞しました。

キング・オブ・ハリウッドの『南部の反逆者』

主演は”キング・オブ・ハリウッド”の異名を持つクラーク・ゲーブル。
風と共に去りぬ」で有名ですが、エルヴィス・プレスリーのキング・オブ・ロックンロールのキングとは意味が違います。プレスリーのキング(THE KING)は王様のいないアメリカでは、唯一のキングの意味。THE KINGというだけでプレスリーと判断されますが、クラークゲーブルやマイケル・ジャクソンの場合は特定分野に於けるキングです。

ストリーミングサービス「HBO Max」の配信ラインナップから削除された映画史に残る不朽の名作「風と共に去りぬ」が問題視された理由は、奴隷制を肯定的に描いている、南部戦争以前の南部を賛美しているといった理由からですが、未だ人種差別の根は深いですね。

「南部の反逆者」も南北戦争を舞台にしていて、ストレートに奴隷問題をテーマにしています。

南北戦争と奴隷問題を背景にした映画

『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、「南部の反逆者」は次のように紹介されています。

1957年のアメリカ合衆国の恋愛ドラマ映画。
監督はラオール・ウォルシュ。出演はクラーク・ゲーブル、イヴォンヌ・デ・カーロ、シドニー・ポワチエなど。ロバート・ペン・ウォーレンの小説『天使の群(原題:Band of Angels)』を原作とし南北戦争と奴隷問題を背景に恋愛を描いた作品と紹介されています。

「風と共に去りぬ」と同じく南北戦争後の南部でのお話で、”キング・オブ・ハリウッド”ゲーブルはさすがの存在感があり、登場するだけで映画が引き締まります。
「風と共に去りぬ」から18年経っているそうですが、衣装やセットも豪華です。ピューリッツァ賞を受けたロバート・ペン・ウォーレンの原作は鋭く奴隷制の問題に切り込んでいますが、57年製作の作品なので娯楽性を生かして見やすくなっています。

キング・オブ・ハリウッド クラーク・ゲーブルの最高傑作
「風と共に去りぬ」

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“タラのテーマ”を耳にしただけで走馬燈のように数々の名シーンが蘇り、知らず知らずの内に涙が溢れだし……
そんな体験をした数限りない映画ファンが愛し続けた、いやこれからも愛され続けるであろう、アカデミー9部門(作品・主演女優・助演女優・監督・脚色・撮影・室内装置賞・編集賞にタールバーグ記念賞)受賞ハリウッド映画史上不滅の最高傑作!

ネタバレ物語

物語は南北戦争直前の南部ケンタッキー州。父が死に、恋人バートン(レックス・リーズン)は奴隷解放運動に参加して北へ行き、孤独となったマンシイ(イヴォンヌ・デ・カーロ)は、母が奴隷であったこと、父が借財をのこしたことで、ニュー・オリーンズの奴隷市場に売られてしまいます。

競りにかけられ好色な男性に売られそうになった寸前、ハミッシュ(クラーク・ゲーブル)が、買手から守るため、高額で身請けする。マンシイはハミッシュの気持ちがわからずとまどいながら反発するが、次第にハミッシュの心を理解し、愛情を感じるようになる。一方でハミッシュ家の奴隷たちを管理する奴隷ラウ・ルウ(シドニー・ポワチエ)の反感を買う。

ハミッシュを挟んで、マンシイ、ラウ・ルウたちの人間関係、さらにハミッシュの古くからの友人たち、奴隷解放をめざす北軍の兵士たちと建前と本音が淡々と描かれるが奥行きは深く、見どころいっぱい、飽きさせません。

ハミッシュの過去に驚くマンシイ、理想を掲げ北軍に身を投じたかっての恋人バートンと再会するマンシイ、北軍に追われる身になったハミッシュ、北軍に委ねる身になったマンシイは離れ離れになり、生きてるのか死んだのかも分からない立場になる。

ハミッシュが自分にとった態度を思い出し、自分の気持ちに気づいたマンシイは、ハミッシュに感謝しながら憎んでいるラウ・ルウに告げる。

これから先も、彼がいても、いなくても、炎があり思い出がある。彼を愛している。愛したのはあの人だけ、これからも。」

真に人種差別なく愛してくれたハミッシュの心に目覚めたマンシイ。
人種差別の壁の前に、感謝しながら憎んでいる炎の中にいる
ラウ・ルウ。

マンシイは、ハミッシュへの想いを告白すると最後に「白人として生きて行く」決意を、ラウ・ルウに告げたのです。ハミッシュがいてもいなくてもハミッシュの心と生きて行くと宣言したのです。

まとめ

しばらく会わないと、気持ちの変化で疎遠になるカップルが少なくないのは、相手を愛しているのではなく、チヤホヤされたいが勝っているから。チャホヤされるのを愛情と思い込んでいるのが、離婚のそもそもの原因。結婚してもチヤホヤなんてあるわけがないので、不倫、離婚、DV、児童虐待さらに児童虐待の因果でDV夫、DV妻と負の連鎖はエスカレートします。

「南部の反逆者」は、奴隷商人、奴隷制度、人種差別という人身売買に合理性を見出そうとするえげつなさ、さらには政治のあり方にまで楔を打ち込みながら、俳優陣も素敵な面々で、一流の「娯楽作品」として仕上げている点で、卓越した手腕を感じました。

ロシアの蛮行に思い出すのは、ノルマンデー上陸作戦を映画化した「史上最大の作戦」です。「史上最大の作戦」は、ハリウッド、イギリスさらにドイツ、オールスター総出演というすごい映画でしたが、出演者がクレジットされる最後にand John Wayne,とクレジットされます。デユーク(公爵)の異名を持つスター中のスターである別格の存在であることを認識させますが、当時すでにクラーク・ゲーブルは他界していて、もし出演していたらどういう扱いになったのかなと想像するのも楽しいです。

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