ないしょシネマ:駅 STATION

駅ステーション こころデザイン
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なぜ、女たちは男を裏切るのか

高倉健が刑事役で主演した『駅ステーション』は冬になると見たくなる映画です。

監督: 降旗康男 脚本: 倉本聰 撮影:木村大作
出演: 高倉健/倍賞千恵子/いしだあゆみ/古手川祐子/烏丸せつこ/田中邦衛/竜雷太/宇崎竜童/大滝秀治/室田日出男/北林谷栄/根津甚八/永島敏行/武田鉄矢/池部良
1981年 東宝映画作品
日本アカデミー 最優秀作品賞・最優秀主演男優賞・最優秀脚本賞・最優秀録音賞・最優秀音楽賞

駅 STATION

駅 STATION【Blu-ray】

山田洋次監督作品『遥かなる山の呼び声』と双璧なす健さん映画のナンバーワンですが、『遥かなる山の呼び声』が涙でクシャクシャになるのに対して『駅 STATION』は冷え冷えとした気持ちになるものの厳しさを黙して背負って寂しさがこれほど絵になるヒトはいない高倉健の真骨頂が氷のようにキラリと光る。

駅 STATION』は、脚本家:倉本聰が高倉健のために書き下ろした刑事映画の傑作です。

増毛駅から最終列車発車―『蛍の光』に導かれて('16/12/4)

冒頭のシ−ンが美しい

駅STATION

タイトルが出る前にいしだあゆみと健さんの駅での別れのシーンからはじまります。
駅 STATION』のいしだあゆみの美しく可愛いこと、こんなに美しいいしだあゆみを見たことがありません。もともと美人ですが、鑑賞した人が忘れないであろう入魂のシーンを見せてくれます。
一方、ひとり雪降る駅に残り立ち尽くす健さんがサングラスをかけるシーンも絶品。

記憶が正しければテレビドラマ『北の国から』の主人公の妻役もいしだあゆみでしたよね。これは劇場の大画面で見ないともったいないですね。他に女優陣は、倍賞千恵子・古手川祐子・烏丸せつこが出演していますが、みなさん美しい。

映画『駅/STATION』(1981)予告編

四人の女優が裏切りを競う

駅ステーション

四人の女性が登場しますが、四者四様に男性を裏切ります。裏切った理由は描かれません。

いじだあゆみは健さんの妻、古手川祐子は妹、烏丸せつこは健さんが捜査する殺人事件の容疑者の妹、最後に登場する倍賞千恵子は高倉健の上司を殺害した指名手配犯の古い恋人。
なかでも容疑者の妹役に扮した烏丸せつこの線路に響く怒号は切なすぎて胸を打ちます。刑事映画ですが『駅 STATION』のタイトルが示すように、人が交差する出会いと別れの映画なのです。

最後に登場する倍賞千恵子もさくらさんとは一味もふた味も違い、八代亜紀の歌う「舟歌」が似合う女を長回しで演じて絶品。息は止めてもカメラを止めない木村大作の鬼気迫る姿が浮かびます。

なぜ、おんなたちは裏切るのか

風待食堂(駅STATION)

男たちが黙々とロジカルに働く一方で、おんなたちはなぜ裏切るのか。
四人の女性はみんな自分の行動を説明できません。これが業力というものなのかも知れません。
駅 STATION』は見終わった後に、永遠の謎を突きつけます。

直子(いじだあゆみ)、冬子(古手川祐子)、すず子(烏丸せつこ)、桐子(倍賞千恵子)が愛するヒトを裏切ります。

最初に駅での別れの場面に登場する直子(いじだあゆみ)は、英次(高倉鍵)の妻。直子の兄がたった一度の過ちじゃないか、許してやってもらえないかと英次に懇願するが無言の英次。英次は察官として過酷な仕事とオリンピックの射撃選手として練習が続いたことが原因で夫婦の関係にヒビが入り離婚に踏み切る。

二番目に登場する英次の妹、冬子(古手川祐子)は、英次の友人の弟と交際していたが、縁談話が持ち上がり、互いに愛し合っていたにもかかわらず、縁談を承服する。

三番目に登場するすす子(烏丸せつこ)は、英次が追う連続殺人犯の妹、増毛駅前の風待食堂で働いている。刑事たちを巧みにかわすが嘘をつているようには思えない。すず子とつきあっている暴走族の男(宇崎竜童)が捜査の協力を申し出る。結婚相手を兄に見せたい一心で、刑事たちが張り込んでいるのを承知で兄に会おうと駅で待ち合わせる。やがてすず子の怒号が線路に響く。

最後に登場する桐子(倍賞千恵子)は、刑事とは知らず英次と相思相愛の関係になる。実は英次の先輩を射殺した逃亡犯が桐子の古い恋人だった。英次もその関係を知らないまま、刑事を退職し、地元に戻って暮らす計画を練っていた。帰省を終えて一旦札幌に戻り退職願いを出すつもりの英次。札幌につていこうかなという桐子。「きたっていいせ」と返事する英次。「増毛」で待っているという桐子。乗換駅で、札幌行きの列車に乗り込もうとする英次に連絡が入る・・・・・。

駅STATION

業は実行されるまで滅びない

駅STATION

では、女性たちの心に。どんな業が入っているのだろうか。業は業力不滅といい実行されるまできえないといいます。

体力で劣る女性が男性より優位に立つとしたら、裏切って自分のために泣いて泣いて、ボロボロにしてやりたい。思いが深ければ深いほど傷つけてやりたい。そんな姿を見たら安心するからではないのか。その結果、好きでもない男と暮らすことになっても、暮らしは暮らし、働きに出るようなものと割り切れば済んでしまう。普段はそんなことはしないけれど、業は阿頼耶識に蓄えられていく。いつか行動になる日が来るのを愉しみにして退屈な日常を過ごす。

まあ、いちばんの業は「女性ホルモン」だと思いますが、

瑜伽行唯識学派「八識」

『駅STATION』の高倉健

唐の時代の僧侶、玄奘三蔵法師がインドまで旅したのはインド大乗仏教の一派「瑜伽行唯識学派(瑜伽派)」が打ち立てた『八識』を学ぶためです。これが奈良の興福寺に渡ってやがて「般若心経」になります。興福寺の五重塔は2023年から2029年まで120年ぶりの修復工事に入るので、見られなくなります。鹿も寂しいでしょうね。

八識とは、五識(眼識、耳識、鼻識、舌識、身識)と意識。末那識(まなしき)、阿頼耶識(あらやしき)の8つの識で構成されています。このうち「五識+意識」は表層心(顕在意識)にあり、「末那識、阿頼耶識」が深層心(潜在意識)にあります。

煩悩の秘密はこの「末那識、阿頼耶識」にあり、特に難解な阿頼耶識(あらやしき)は根本心と言われる識(蔵)で業力が蓄えられています。

結果として現れるまで、力(種子)として消えずに残ると説かれます。これを業力不滅といい、私たちを突き動かしています。つまり業力が人生脚本の種子です。

阿頼耶識には、良い記憶もそうでない記憶もすべて収納されているといいます。

私たちは「何を食べるか」から始まって、日々、選択と決定の連続を、必ずしも、明確な理由があってというよりも、ただ、なんとなくして毎日を暮らしています。

風待食堂(駅STATION)

現在は街の観光案内所になっている「混 待食堂」

いちばん解りやすい事例が「恋愛」です。なぜ、好きになったのか、その人を選んだのかというと食べ物と同じでなかなかわかりません。しかもほとんどの場合、実際には一目惚れが大半です。不思議なことに情報もないのに選んでいるのです。後でプロセスが語られますが先にプランしたことを後付けでかたっています。

人間の心は複雑で、自分の心であっても、思うようになりません。

どうしてあの人を好きになったんですかと聞かれたら、後付けで説明しているに過ぎません。

私たちが自覚できる心の部分は、ほんの一部であって、自分でも意識できない心の働きによって、日々の様々な物事を決めています。

そこで頼りにするのが「世間の常識」です。世間といっても、ひとりの人間が自覚している世間とは小さなもので、職場や学校といった限られた世界です、それぞれの世界を「業界(ぎょうかい)」といいます。

この業(ごう)とは、「人間の業(ごう)」というように、本来は「カルマ」のことをいいます。カルマとはサンスクリット語で「行為」のこと、または行為の結果として蓄積される「宿命」と訳されます。

業には口業(くぎょう)、意業(いぎょう)、身業(しんぎょう)があります。
・口業(くぎょう)とは口で話すこと、
・意業(いぎょう)とは心で思うこと、

・身業(しんぎょう)とは体の行いです。

口、心、体で行動した行いは力となります。それを「業力(ごうりき)」と呼んでいます。
業力は阿頼耶識に蓄えられ、私たち一人一人の世界(=一人一宇宙)を生み出しています。高倉健は一人一宇宙を演じて映画史上、最高の俳優さんです。

業力は実行されるまで業種子として心で育つ

阿頼耶識に蓄えられた業力を業種子と言います。
行為の種を意味するので行動の原動力と解釈すると解りやすいでしょう。
業力は行動されるまで残り続けています。
業種子つまり過去の行いが力となってすべておさまっている蔵が阿頼耶識です。

阿頼耶識に蓄えられた業力は、結果として現れるまで、力(種子)として消えずに残ると説かれます。これを業力不滅といい、私たちを突き動かします。

つまり業力が幼児が愛着の絆が信頼できずに書く(文字ではなく業力で書く)人生脚本の元ネタです。

映画は高倉健が札幌に向かう列車に乗ったあと、烏丸せつこが乗り込んで来て終わります。

増毛

まとめ

絶滅危惧映画愛護協会ないしょシネマ

高倉健主演で11年間の刑事の人生を描いた傑作。北海道・増毛町、雄冬岬、札幌市などを舞台に、直子(いじだあゆみ)、冬子(古手川祐子)、すず子(烏丸せつこ)、桐子(倍賞千恵子)ら四人の女性と男たちの様々な人間模様を描き出した。劇中、東京オリンピック銅メダリスト円谷幸吉氏の遺書の朗読、八代亜紀の代表曲「舟唄」が印象的に使用されていることでも知られている。
「北の国から」の倉本聰が高倉健のために書き下ろした脚本を降旗康男が監督した名作である。

ラスト、刑事の尋問を受ける倍賞千恵子。匿いながら通報した矛盾を問われ、倍賞千恵子が答えます。「辻褄が会いませんよね・・・・男と女ですから。」と涙する。

陰でやりとりを聞いている高倉健。胸に去来するものは・・・・(敬称略)

【修正】さよなら 留萌本線 増毛〜留萌間12月5日廃止&高倉健さん三回忌

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