名言で知るマトリックスワークブック|「心を解き放て」

マトリックスワークブック
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仮想世界での格闘術をネオに教えたモーフィアスは、ジャンプのやり方も教えようとします。通常の人間では到底飛び越せないビルからビルへのジャンプも、仮想世界では飛ぶことで難なくこなせるのです。モーフィアスからネオへジャンプをする際の助言が「心を解き放て」でした。

今回は、「心を解き放て」か。マトリックスワークブック、楽しみだなあ!

心を解き放て

映画『マトリックス』でモーフィアスが、ネオにいう重要なセリフがあります。

モーフィアス:「心を解き放て」
心を解き放つとは、「集中」です。
心を解き放つ名人は、子どもです。
子どもは好きに遊んで、家に帰ったら、それまで何をしていたのか、気にもしていません。
その瞬間、瞬間に没頭しているので、執着がなく、少し時間が経って家に帰った頃には、少し前のことは、すっかり気にかけていません。
大人は教育の名のもとに、集中させなくするのが得意なようです。
星の王子さまに言わせたら、「キノコ」です。

キノコってどんな人のこと

星の王子さまが「キノコ」と呼ぶのは、こういう場面です。

『ぼくの知っているある惑星に、真っ赤な顔をした男の人がいる。その人は花の匂いを嗅いだことがない。星を見たことがない。誰かを愛したこともない。計算以外のことは何一つしたことがないんだ。1日に何度も何度もその人はきみみたいに言うんだ「私はとても重要な人物だ!」って。見栄ですっかりふくらんじゃってる。人間じゃないんだよ、そんなの。キノコなんだ!』
ようするに、人にとって決定的にいちばん大切なことを度外視して、他のことを優先順位の上位に持ってきてる人をキノコと呼んでいます。

心とは実体でなく経験そのもの

星の王子さまも、モーフィアスの心が特定の実体のあるもののように捉えたような言い方に聞こえますが、心とは「いま、ここ、この瞬間」に展開している経験そのものです。
心は流れる川の水泡のようなものです。
私は心というと、北アルプスから流れてくる「神通川」という名の神が通る川が富山県にありますが、その川の一滴の水を思い浮かべてしまいます。つまり人間になる前から止むことなく心を通り過ぎるように流れている60兆の細胞が生み出す思考や感情、感覚の経験つまり幻です。この状態を西洋の心理学者たちは、映画の一コマという表現をしました。ひとりひとりの脳がスクリーンに映し出す仮想の映像であり、現実的な表現に置き換えると映写機が映し出している映像のようだと口々に伝えたのです。
星の王子さまが「キノコ」と言ったのは「経験してないじゃないか」という意味で「タマネギ」でも「キャベツ」でも同じことなのです。モーフィアスが言った「心を解き放て」の意味は経験をためらうなということになります。

飛ぶのが怖い

モーフィアスが「心を解き放て」と言ったことで、ネオになにが起こったのでしょう。
ここで脳の働き方について考えてみましょう。
一般に脳が身体のある細胞や神経、筋肉に指令しているように考えられがちですが、脳は決して指令官ではありません。脳はオーケストラの指揮官のような存在ではないのです。

脳はそれぞれ部位があり、ジャズバンドのように、細胞同士がハーモニーを奏でていると考えるのが正しいようです。
モダンジャズの演奏では都度、あ・うんの呼吸でアレンジすることは珍しくありません。細胞も同じです。細胞同士がバラバラに活動しながらその時々にハーモニーを整えます。すると”飛ぶのが怖い”という「思考」とは別に、ジャズバンドのように「神経細胞」が勝手にお互いにおしゃべりをはじめてやがて細胞が結合(=ハーモニー)します。

思考と脳内に作られた恐怖に反応した「神経細胞の結合」とが対抗して、細胞の結合に良い記憶がないと、その結果、”飛ぶのが怖い”という「思考」を思い出させるのです。

このような脳の「おしゃべり」は繰り返されるごとに、より説得力のあるおしゃべりになっていきます。どんどん大きな声になっていきより説得力を増していきます。すると”飛ぶ”と聞いただけ、怖いを連想して、心臓はドキドキ、冷や汗をかくようになります。

仕組みは簡単です。好きな人を前にしてドキドキする仕組みと同じなのです。
「ビルの谷間を飛ぶ」が「好きな人に会う」に代わっても、ドキドキは変わりません。

心を解き放つ、オープンにしたら、流れるままに通り過ぎる感情、感覚、思考を観察していると、自己が消えて、気づきの意識が訪れます。経験が脳内細胞の構造を変えるので、おしゃべりが止まり、静けさに変わります。これが坐禅の得難い経験ですが、同様にネオも「飛ぶのが怖い」を思い出さなくなり、消える瞬間を迎えることになります。

なので、飛んだ結果、「楽しかった」というパターンを記憶すると、飛ぶたびに「楽しい」が強化され、やがてはなんの苦もなく飛べるようになります。話するのも恥ずかしい相手とデイトを重ねて毎回楽しいともっとデイトしたいと思うのと同じです。

ネオはモーフィアスの指導の元、すでに飛ぶことを可能にしていますが、過去の体験から、できずにいた状態でした。モーフィアスが「心を解き放て」と言ったことで、ネオは自身に訓練の努力の記憶を取り戻し、自分への執着から解放され「救世主」へまた一歩前進したのです。

『心を解き放つ』名言

『心を解き放て』には、もっと深い意味があるので追加しておきます。

「死に物狂いでゲイにならなければならない」と提唱した哲学者がいます。性的な意味ではなく、「自分を抑圧して生きる暮らし方」への警鐘です。勇気をもって自分のあり方を自由に表現する生き方への応援です。『マトリックス』の監督、ウォシャウスキー姉妹は命がけで実践した人です。『マトリックス』は未来を描きながら現代に一矢を投じたのです。

最近は「心を解き放つ」場面が、オリンピックをはじめ、あらゆる場面で見られるようになりました。従来の価値観にがんじがらめになっていると違和感を感じますが時代は扉を明けはじめたようです。中国は共産党挙げて抑え込みに懸命なようです。

ミシェル・フーコーというフランスの哲学者は、徹底的に監獄の歴史を研究「囚人をまとめて監視する監獄の仕組み」を「近代国家」の仕組み(パノプティコン)であると喝破し「見えない他者を気にして自分の行動を束縛する現代人の生き方」の典型的なモデルであると唱えたのです。

そして自分のとる行動がヘンではないか、「まともかどうか」「狂っていないか」など自分への懐疑心、さらに「出る杭は打たれる」を基準として自分で自分の行動を制限、他人と同じでないとダメ、空気を読んで質問したくても手をあげない、コントロールしてしまう「同調圧力」自縄自縛するように仕向けたの社会を形成した「権力」への批判です。

ヨーロッパやアメリカでさえ、そうなのに、日本はさらにその傾向が強いのは進駐軍が、旧来の日本文化に根ざしてコントロールしたからですね。

フーコーの思想はソクラテスの弟子にして、アリストテレスの師に当たるプラトンが『国家』唱えた「洞窟の比喩」にまで遡ります。
この仕組みを家庭にまで持ち込んだために事件になるのは痛ましいことです。日本の事件の半数は「家庭」で起こっているといるそうです。

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あらすじ解析

まとめ

マトリックス名言集から学ぶ「マトリックスワークブック」今回はモーフィアスがネオに言った「心を解き放て」です。あなたにはどのように聞こえましたか?
そもそも、心は実体がありません。心とは経験です。
つまりモーフィアスはネオに脳のおしゃべりを止めさせて、静かな環境に招き入れたのです。坐禅と同じ要領で、ネオに観察の機会を与えたことで、ネオは冷静さから本来の力を経験したのです。

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